2020年3月に原油価格が急落しました。原油価格は経済や株価にも影響を与える、とても重要な指標になっています。
今回はこのような原油価格の急落が起こった理由を調べてみました。
【この記事の目次】
それでは早速内容に入っていきましょう。
原油価格の動向
原油価格の推移についてですが、2020年3月に入ってから急落し、WTI原油先物は「1バレル20ドル」付近の推移となっています。
WTI原油先物とは
世界の3大原油指標の1つで、他に「北海ブレント原油先物」「ドバイ原油スポット価格」があります。
そのなかでもWTI原油先物は、取引量と市場参加者が圧倒的に多く、市場の流動性や透明性が高いため、最も注目される指標です。
これがどれだけすごいことなのかを把握するために、ここ数年間のチャートを確認しましょう。
高い時では1バレル100ドル以上しており、 それ以外でも2016年を除けば大体1バレル50ドル前後で推移していた原油価格が、半値以下に急落したのです。
それも1ヶ月かからずに下落していますから、インパクトは非常に大きなものとなっています。
このような急落が何故起きたのか、理由を見ていきましょう。
原油価格急落の理由
原油価格が急落した理由は大きく以下の2つだと思われます。
①新型コロナウイルスの影響
②原油減産交渉決裂
これらの詳細は後で説明することとしまして、先に原油価格がした経緯を時系列に沿って確認しておきます。
『2月25日』
新型コロナウイルスの拡大により、世界規模で原油需要が縮小することが懸念される。原油価格は節目の50ドルを割る(WTI終値49.9ドル/バレル)
『3月5日』
石油輸出国機構(OPEC)総会で、減産はロシア次第という条件の下、4~6月(第2四半期)に日量100万バレル減産を合意(WTI終値45.90ドル/バレル)
『3月6日』
OPEC加盟国とそれ以外の主要産油国で構成するOPECプラスは、ロシアが減産に合意しなかったことから協議が決裂(WTI終値41.28ドル/バレル)
『3月9日』
サウジアラビアの増産方針が伝わり、原油価格は大幅に下落(WTI終値30.24ドル/バレル)
このような経緯で原油価格が下落したわけですが、「新型コロナウイルス」と「原油減産交渉決裂」が大きく影響していると言えます。
ここからはこれら2つについて解説していきます。
理由①コロナウイルスの影響
原油価格が下落するきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの影響による原油需要の減少です。
新型コロナウイルスの感染拡大により、人の往来減少・向上の操業停止などが起きていることから、原油を使う量が減っています。
諸説あり、正確には算出されていないと見るのが正しいと思いますが、世界全体で最大2,000万〜3,000万バレル/日(2割〜3割)の需要が減少するという情報もあります。
これが原油価格下落の1つ目の理由です。
理由②原油減産交渉決裂
そして原油価格急落の引き金を引いたのが、2つ目の理由です。
3月上旬に行なわれた、OPECプラスにおいてロシアが減産に合意せず交渉が決裂、更にはサウジアラビアが原油の増産方針を発表したことから、原油価格が急落しました。
問題はなぜ減産に合意しなかったかということです。
これには産油国同士のシェア争いが深く関係しています。
ロシアが減産に合意しなかった理由は、「ロシアとサウジが協調減産している間に、今やシェールオイルの採掘により世界屈指の産油国となっているアメリカがシェアを拡大することが受け入れられなかった」とも言われています。
また、国の財政を石油の輸出に頼るサウジアラビアにとっても、シェアの拡大を図りたい思いがあります。
つまり、例え価格が下がり利益が少なくなろうともシェアの拡大を優先する、互いに潰し合いの様相になっているということです。
4月9日〜10日にかけて、OPECプラスではサウジアラビアやロシアが「1000万バレル/日」の減産を打ち出し、G20でアメリカに協調減産を呼びかけましたが、具体的な削減目標は声明に盛り込まれませんでした。
今後は継続協議していくとしていますが、「需要減>減産」となるであろうという見方もあるようですね。
原油価格急落の影響
原油価格の急落は様々影響を与えており、企業業績にも影響が出始めています。
以下の表は、すでに業績の下方修正を発表している主な企業です。
直接石油に関連する企業はやはり影響が大きくなっています。黒字から一気に赤字に転落している企業もあるので大変です。
また、株価全体にも悪影響が出ており、原油価格が急落した翌日には日経平均もNYダウも暴落し、世界同時株安の発端にもなりました。
今後の見通し
2020年3月に原油価格が急落した理由を解説してきましたが、まだまだ先が見えない状況が続いています。
とはいえ、現在の状況が続けば産油国は共倒れになる危険性があります。
なぜなら、 ほとんどの主要産油国が現在の原油価格では財政を支え切れないからです。
国際通貨基金(IMF)によると
国の財政収支が均衡する原油価格はサウジアラビアが1バレル83ドル台。ロシアが予算で設定した水準は42ドル台です。
特に、原油関連の歳入が全体の7割を占めるサウジアラビアは原油価格が下がったままでは厳しいでしょう。
また、アメリカのシェールオイルも損益分岐点が1バレル50ドル前後と言われており、現在の価格を歓迎する産油国は無いと言えます。
そのため、個人的にはいずれ原油価格が上昇に転ずると考えています。そうした考えから、先日原油に投資を始めました。
原油に投資する方法と、私が実際に購入した金融商品を以下の記事で紹介しているので、良かったらご覧ください!
※4月23日追記しました
※6月9日追記しました