「不動産投資で節税ができます!」
果たしてこれは本当でしょうか?
節税については、不動産投資の業者の中でも、メリットとして挙げてくるところと、触れてこないところと両方ある気がします。
それもあって、ネット上の意見も2分されているように思います。
結論からお伝えすると、不動産を保有する人の「所得」と保有する「物件の条件」次第であるとしか言えません。
ただ、ケースに応じて自分でシミュレーションできれば、この疑問は解決できると思うので、今回は税金計算の仕組みを解説していきます。
この記事を参考に、ご自身で税金計算をできるようになっていただければ幸いです。
【この記事の目次】
それでは早速内容に入っていきましょう。
シミュレーションに必要な知識
不動産投資が節税になるか否かは、自分自身で計算してみると一番明確になると思います。
そのためには、前提となる知識がいくつかありますので、まずはそこから理解をしていきましょう。
必要となる知識は以下の3つです。
- 所得税の計算
- 住民税の計算
- 不動産所得(収入ー経費)の計算
それでは、それぞれ1つずつ見ていきます。
所得税の計算
まず、所得税の計算方法の全体図は以下のとおりです。
例えばサラリーマンの場合、主に給与所得に対して所得税がかかっています。
ここに不動産投資による収支が加わった際に、「課税所得」が増えれば所得税増。
反対に「課税所得」が減れば所得税減となるわけです。
また、所得税の税率には累進課税制度があり、「課税所得」が大きくなるほど、高い税率が適用される仕組みです。
特に元々「課税所得」が高い人が、不動産投資による収支によって「課税所得」が減少すると、所得税減の効果が大きくなります。
税額控除額については、不動産投資の影響は受けないので、ここでは気にしないこととします。
住民税の計算
次に住民税の計算方法を確認していきます。
所得税の時と同様、不動産投資による収支が加わった際に、「課税所得」が増えれば住民税増。
反対に「課税所得」が減れば住民税減となります。
所得税と異なるのは税率で、住民税は「課税所得」の額によらず、一律10%の税率で計算がされます。
そのため、元々の「課税所得」の大きさによる影響はそれほど受けません。
また、税額控除額と均等割額については、不動産投資の影響は受けないので、ここでは気にしないこととします。
不動産所得(収入ー経費)の計算
ここまで所得税・住民税の計算方法を見てきました。
一言でいえば「不動産投資による収支=不動産所得」によって「課税所得」が増えるか減るかがポイントです。
そのため、不動産所得の計算方法を確認していきましょう。
計算方法は簡単です。
「不動産所得」=「不動産収入」ー「経費」
ここでポイントになるのは「不動産収入」と「経費」に該当するものにそれぞれ何があるかです。
不動産収入に該当するものは、主に以下のものです。
- 家賃収入
- 礼金
- 更新料
反対に経費に該当するものには、主に以下のものとなります。
- 管理手数料
- 管理費
- 修繕積立金
- 借入金利
- 修繕費
- 損害保険料
- 減価償却費
- 租税公課
- 雑費
- 購入時の諸費用
これらの中でも、節税に対して重要なのが「減価償却費」と「雑費」です。
理由は経費として、不動産所得のマイナス要因として働くからですね。
特に「減価償却費」は、実際の支出があるわけではなく、会計上で経費として扱うことができるところが大きな特徴です。
また「雑費」についてはその他に不動産投資に関連してかかった経費を計上することができますが、この部分は専門家に話を聞いたほうがいいでしょう。
そしてこの不動産所得(収入ー経費)が赤字(経費の方が多い)になった場合に、給与所得等の他の所得と損益通算をして、課税所得を圧縮することができるのです。
不動産投資の税金をシミュレーションしてみよう!
それでは実際に例を挙げて、税金のシミュレーションをしてみたいと思います。
今回の計算条件は以下のように設定します。
- 給与収入:500万円
- 給与所得:250万円
- 家賃収入:110万円
- 毎月の経費:35万円
- 租税公課:5万円
- 減価償却費:100万円
- 雑費:30万円
ではこの条件を元にシミュレーションしてみましょう。
所得税のシミュレーション
まずは所得税のシミュレーションをしていきます。
【不動産投資をしていない場合】
住民税 = 250万円 ✕ 10% ー 97,500円 ー 税額控除額
= 152,500円 ー 税額控除額
【不動産投資をしている場合】
まずは不動産所得を求めます。
不動産所得 = 110万円 ー 35万円 ー 5万円 ー 100万円 ー 30万円
= −60万円
次に給与所得と不動産所得を合算して所得税を求めていきます。
所得税 =(250万円 ー 60万円)✕ 5% ー 税額控除額
= 95,000円 ー 税額控除額
結果、所得税は57,500円節税することができました。
※税額控除額は、今回どちらの場合も同条件と仮定しています。
住民税のシミュレーション
次に住民税のシミュレーションもしてみます。
【不動産投資をしていない場合】
所得税 = 250万円 ✕ 10% ー 税額控除額 + 均等割額
= 250,000円 ー 税額控除額 + 均等割額
【不動産投資をしている場合】
先ほど同様、給与所得と不動産所得を合算して住民税を求めていきます。
住民税 =(250万円 ー 60万円)✕ 10% ー 税額控除額 + 均等割額
= 190,000円 ー 税額控除額 + 均等割額
結果、住民税は60,000円節税することができました。
※税額控除額と均等割額は、今回どちらの場合も同条件と仮定しています。
所得税と住民税のシミュレーションをまとめると、合計で117,500円の節税となりました。
なんとなくでも税金計算の感覚を掴んでいただければ幸いです。
まとめ
最後に繰り返しになりますが、不動産投資で節税が可能かどうかは、不動産を保有する人の「所得」と保有する「物件の条件」次第です。
今回はあえて私のようなごく普通のサラリーマンの基準で計算をしてみましたが、元の給与所得によって税金は大きく変わるので、ぜひ仕組みを理解してご自身で計算してみてください。
また「減価償却費」は物件購入の数年後に計上できる額が減少することが多いです。
そのため、最初は節税できていても、何年か後には納税が必要となる可能性も十分にあるので気をつけましょう。
ここまで不動産投資における税金計算の仕組みを解説してきましたが、正直、税金の計算は非常に難しい部分があることが否めません。
不動産投資会社の中には、税金対策について説明してくれるところもありますので、詳しく知りたい方は、直接話を聞いてみると良いでしょう。
実際に私が参加した、不動産投資セミナーをまとめた記事もありますので、よろしければ参考にしてください。