2020年4月20日から22日にかけて、原油価格が過去に例を見ないほど下落しました。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物5月限は、一時マイナス40.32ドルの歴史的な安値を付けました。
一体何が起きたのか調べてみました。
【この記事の目次】
それでは早速内容に入っていきましょう。
原油価格の推移
米原油先物(WTI原油先物)は、21日に5月物の決済を迎えました。5月物から6月物へと切り替わる前後のチャートが以下の通りです。
5月物は決済直前に暴落し、一時はマイナス40.32ドルの歴史的安値を記録しました。
その後プラス圏を回復し、1バレル=2ドル前後まで戻しましたが、一体何が起こったのか見てみましょう。
原油先物の仕組み
今回の暴落の背景には、商品先物取引ならではの仕組みも影響しているので、簡単に抑えておきます。
商品先物とは
あらかじめ決済日を決め、将来どれくらいの値段がつくかを市場参加者が考えながら取引するものです。
現在の米原油先物では、4月21日に決済を迎えた5月物から6月、7月と月ごとに限月があり、2031年2月物まで取引されています。
原油先物の本来の使われ方としては、石油企業などが価格ヘッジをして経営の安定に役立てます。
しかし、原油先物で資産を運用している人とっては大きな問題が存在します。
5月物を買っていれば、決済を迎える前に先の限月に乗り換える必要があり、そうでなければ、決済時に現物の米国産原油を受け取らなければならないからです。
原油の貯蔵には専用の施設が必要です。普通は受け取れるわけがない、つまり原油先物を手放さなければならないということです。
この仕組みが今回の暴落に大きく関係しています。
暴落の経緯
直近の動向としては、コロナウイルスの感染拡大によって原油の需要が大きく減少しています。
IEAの4月15日の発表では、原油の世界需要の減少を以下のように予想しています。
3月:1080万バレル
4月:2900万バレル
5月:2580万バレル
実際に原油貯蔵能力の限界に近づきつつあるいう情報もあり、石油タンカーを借りて洋上に浮かべておくにしても、タンカーの賃借料も高騰してます。
要は原油の行き場がないのです。引き取り手がいないので価格も下がります。
今回の米原油先物(WTI原油先物)は20日の終値時点で5月物と6月物の価格差は57ドル強ありました。
5月物から6月物への乗り換えに投資家は莫大な売買損を強いられることになります。
原油の現物を受け取るわけにはいかない、でも売る売れない状況で投資家は追い詰められました。
その間に5月物だけがどんどん下がり、ついに取引価格がマイナスに。
つまり「1バレルあたり30~40ドルの処分料を払う方が、原油の現物を受け取るよりはまし」という市場のメッセージがあったということでしょう。
今後の見通し
今後も原油の供給過剰が解消しなければ、新たに期近限月となった6月物においても同じことが発生する可能性があります。
実際に4月21日の取引で6月物も一時6ドル台まで急落しています。
一旦は持ち直しましたが、これからどうなるかはわかりません。
ゴールドマン・サックスのアナリストによると、WTI原油の受け渡し場所である米オクラホマ州クッシングの貯蔵施設が5月第1週までに満杯になる可能性が高いと予測されています。
まだまだ厳しい見通しが続きそうです。
一方で、コロナウイルスの収束とともに原油需要が回復すれば、中長期的に原油相場が回復していくことも予想されます。
また「OPECプラス」は21日に対応を協議するための緊急テレビ会議を開き、追加減産及び、価格を下支えする追加策を講じる用意があると表明しています。
明るい話も出てくるかもしれませんね。
結局のところ、現状からはまだ先が見えないとしかいえないでしょう。今後も注意深く見守っていくしかなさそうです。
皆さま無理な取引にはお気をつけください!
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